宗教者九条の和

The Third Asia Inter-Religious Conference on Article 9 of the Japanese Peace Constitution
3回 9条アジア宗教者会議 Article 9 and Peace in Asia
 Octover 5-7, 2011 Okinawa Christian University in Okinawa, Japan

3回 9条アジア宗教者会議 |開催日程||趣意書||報告会開催日程
3回沖縄声明文 | |決議文・済州島江汀村に平和を!|キリスト新聞掲載記事(2011/10/22)


3回 9条アジア宗教者会議 趣意書

【日本国憲法第9条】

1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力によ
  る威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認
  めない。

1.アジアと世界における「9条」
 日本国憲法は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」(憲法前文)、「9条」をもって戦争を永久に放棄しました。    
 「9条」は、アジア・沖縄の人々に対しては、アジア・太平洋戦争における加害とその反省の上に立った不戦の誓いであり、日本が二度と軍事侵略をしないことへの誓約です。また、 「9条」は、日本政府に対して、いかなる戦争もしてはならないことを義務付けた最高法規です。
 国連の呼びかけによって始まったGPACC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)は、東北アジアにおける軍縮と非軍事化を促進する重要課題の一つとして、日本が「この条項(9条)を改定することは、地域の平和と安定に対する脅威となる」と述べています。このように世界は日本に対して「憲法9条を厳守すること」を期待しています。

2.米軍再編と日本の軍事化
 第二次世界大戦での日本の敗戦後、66年を迎えようとする今日、日本は猛スピードで戦争への関与のかたちを変貌させようとしています。それは「戦争への加担、協力」から、自ら「戦争をする国」への変質です。この変貌が米国の「世界的国防態勢の見直し」(米軍再編)と直結していることは言うまでもありません。東欧から中東、インド、東アジアにいたる「不安定な弧」に軍備態勢を確立するために、アジア・太平洋地域では「朝鮮戦争以来最大」(米国防総省)の大規模な米軍再編が実現されています。2006年5月に行われた日米四者会談においては、同盟国としての日本の軍事的役割がさらに明確にされました。在日米軍と自衛隊の一体化が進められ、現在ワシントン州にある米陸軍第一司令部が座間基地に移転し、自衛隊の中央即応軍司令部と日米統合司令部を確立する構想です。日米安全保障条約の極東条項を無視し、米国のグローバル反テロ戦争への全面的協力を目的としてミサイル防衛の強化も実現しています。

3.「戦争をする国」への法制化
 安倍政権は、このような軍事化をさらに推進するために最大の障害となる憲法九条の無力化を狙い、憲法「改正」への道を着々と歩み始めました。世界最大の軍事国の一つである日本の軍事費は米国、ロシア、中国に匹敵し、「9条」を持たない日本が、アジア・太平洋地域の平和と安全を脅かす存在になることは明らかです。
 1990年代後半以来、日本政府は、「戦争をする国」への法整備として、あっという間に「国旗国歌法(日の丸・君が代)」、「盗聴法」、「有事法制」を制定しました。それに加えて、愛国心教育を軸とする「教育基本法」が改悪され、「9条」をターゲットとした憲法改悪の準備が着々と進められています。また、憲法改悪を目的にした「日本国憲法の改正手続に関する法律」が、2007年5月14日に成立し、改憲への道が大きく開かれました。2011年5月現在、この法律は「施行すれども執行できず」という状況にあります。しかし、改憲原案を審議できる「憲法審査会」の規定が2011年5月に衆参両院で成立するなど、明文改憲をもくろむ国会内の情勢は予断を許しません。
 明文改憲を目指す動きに呼応して、憲法施行直後から始まる解釈改憲の動きも加速化しています。イラク特措法に基づく自衛隊のイラク派兵に見られるように、「改憲」と「戦争をする国」への既成事実が積み上げられています。これは「9条」に(?)違反する戦争行為(名古屋高裁のイラク派兵違憲判決)を時々の解釈によってなし崩しに踏み越えて、「9条」を空洞化させようというもくろみです。2009年の民主党政権の登場後に、アフガン戦争への参与であるインド洋への自衛隊派遣は終わりました。しかし、ソマリアへの派遣は今も続いています。また民主党政権は2010年に新防衛大綱を発表し、北朝鮮・中国・ロシアを仮想敵国化しつつ米国および韓国との軍事同盟を深めることを明らかにしました。今までの自衛隊の「専守防衛」という方針の見直し、集団的自衛権についての憲法解釈の見直し、PKO五原則の見直し、武器輸出三原則の見直しをしようとしているのです。
 2011年3月に起きた福島第一原子力発電所事故は、今までの原子力・核行政のあり方を問うています。非核三原則が公然と破られていたことは、米軍の核の傘に入ることや米軍による核兵器持ちこみ事実の暴露だけではなく、国策としてプルトニウムを作っていたことをも含むからです。わたしたちは中曽根康弘・安倍晋三・麻生太郎・鳩山由紀夫ら首相経験者が、従来の原子力・核行政にも改憲にも核武装にも積極的であることを知っています。

4.沖縄で世界の平和を祈る
 日本におけるこれらの危険な動きに対して宗教者は座視することができません。わたしたち宗教者はすでに2007年(東京)、2009年(ソウル)と九条アジア宗教者会議を開催してきました。そして「9条」をそれぞれの生きている場で紹介し、実践し、またその実践を分かち合う経験を繰り返してきたのです。
 前回ソウル会議においては、特に朝鮮半島の平和的統一を焦点として、「9条」の精神を活かしながらこの課題に取り組む祈りと行動を共にしました。その会議の中でわたしたちは韓国・平澤(ピョンテク)の米軍基地と、沖縄の米軍基地の類似性に気づきました。世界的な米軍による暴力支配が「9条」の精神に反すること・米軍の存在がアジアにおける「9条」実現の大きな障害となっていること、つまりわたしたちは非暴力によって平和を作り出さなければならないという共通認識を得たのです。自国の敵であれば、第三国に対して任意に軍事行動や暗殺を行うことができると考える米国は、「暴力による平和」の信奉者です。
 沖縄が第3回の会議の開催地に選ばれたのは以上のような経緯からです。
沖縄には「非武装」の伝統が元来ありました。沖縄は明治政府によって侵略併合され強制的に日本の一部とされました。沖縄は15年戦争の際には日本の国家体制護持のために捨石とされました。沖縄は日本国独立の引き換えに米国の支配下に置かれました。そのために米軍基地が存置されることとなったのです。いわゆる「本土復帰」後も、この状況は変わりませんでした。日米安全保障条約と日米地位協定によって、軍隊は日常的に沖縄の人々を苦しめています。その米軍が沖縄から出撃して、朝鮮戦争・ベトナム戦争・湾岸戦争・アフガン戦争・イラク戦争に投入されたのです。そして湾岸戦争以来、日本の自衛隊も米軍と一体となって戦争行為を行っているのです。
 沖縄を含め日本にはただの一度も憲法9条は実現したことがありません。その理由は、憲法9条違反の米軍基地と自衛隊の存在をわたしたちが認めているからに他なりません。
 この現状を宗教者としてどのように考えたら良いのでしょうか。普天間基地をはじめ沖縄にある基地、あるいは日本にある米軍基地や自衛隊だけが問題なのではありません。アジアに展開され、全世界に展開されている米軍基地、そしてすべての国の軍隊、すべての集団の武装、すべての人の暴力こそが問題なのです。
 「9条を沖縄で実現し、9条を各国に紹介し、9条を国連憲章に書き込むこと」、そして「9条をすべての人の心に刻むこと」、そのために全世界の宗教者たちが知恵をこらし、祈りを合わせ、行動を共にする会議となるようにと願います。「非武の島」で、非武装・非暴力による平和を希求しましょう。


2011年6月3日
第3回九条アジア宗教者会議・実行委員会

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